受賞:2020年ハーヴェイ賞
最近作:<[大文字図書]時間が経つほど輝く>、<明日はまた別の日>、<時間が経つほど輝く>···全30種
出版社提供の本紹介
多数の国際漫画賞を受賞し、世界的なグラフィックノーブル作家として位置づけられたキム·クムスクの新しい作品、「明日はまた別の日」が12ヶ国で翻訳出版された作家の前作「待つ」を製作したイチゴ書店で出版された。『草』、『待つ』、『ジスル』を通じて現代史の大きな事件を全身で耐え抜いた人々を情熱的に描いてきた彼が、私たちの周辺の小さいが、深い話を低い声で聞かせてくれる。
《明日はまた別の日》は切実な気持ちで子供を望むが不妊で苦しむ夫婦に関する話だ。作家が描き出した生々しい人物たちは不妊夫婦の苦心と奮闘に共感させ、「出産」に対する韓国社会の通念と態度を振り返らせる。主人公夫婦が代表する不妊夫婦の困難は小さくないが、だからといって彼らの未来が絶望的なわけではない。これまで白黒の墨で絵を描いてきた作家は、華やかな色味の水彩画で本書の最後のページを締めくくり、主人公の不妊夫婦の平和な暮らしを祈る。
超少子化時代、子供を待つ夫婦
韓国社会の深刻な少子化に対する懸念の声が高い。多様な原因分析と代案提示が続いているが、明確な対策はまだ見つかっていないようだ。超少子化時代、様々な経済·社会的環境によって出産忌避現象が大きくなる中、その反対側には切実な気持ちで子供を産むために努力する不妊夫婦がいる。本の主人公「海」と「山」もそんな人だ。
34歳の漫画家パダは音楽をする同年代の夫サンイと暮らしている。「良い知らせはないの?」という質問に「私は子供を産まない」として腹立たしく答えるが、実は2人は子供を望んでいる。避妊をしてから1年が経ったが、2人の間に子供ができないだけだ。パダとサンイは、より積極的に子供を持つために病院を訪問し、不妊検査を受け、試験管施術を勧められる。大きな決心の末に試験管施術を始めるが、耐えなければならないことが侮れない。
生理開始10日前からは早期排卵抑制注射を、開始後3日からは過排卵注射を行う。注射は規則的に毎日午後6時に行う。毎日自分のへその上に90度で注射針を刺しておくが、海はこの仕事に絶対慣れていない。卵胞が破裂する注射を受けてから2日後、卵子を採取しに病院に行く。夫も一緒に病院で精液を採取する。そして睡眠麻酔による卵子採取、3日後に続く胚移植手術、そして待ちわびている妊娠のニュース…···しかし、施術は成功しない。パダとサンイは「うまくいくだろう」お互いを慰めながら6ヶ月以上体を作って次の試験管施術を準備する。そのように4回の試験管施術が続く間、3年という時間が流れ、2人の体もそれだけ年を取った。4回目の試み、健康な胚を得ることが事実上不可能になったという医師の診断を聞いたパダは結局、試験管施術をあきらめた。
人として生まれたら子供を産まないと
試験管施術は精神的にも肉体的にも大変な過程だが、不妊夫婦を苦しめることは他にもある。「出産」に対する周囲の人々が投げる言葉がそれだ。
「人として生まれたら子供を産まないと…」子供なしで何の楽しみで暮らしているんだい?
老けよ、子供しかいない」(31ページ)
「李さんが一人息子ではないか。息子を産んでこそ、義理の両親のハンティを可愛がらなければならない」(33ページ)
「私の友達はみんなおばあちゃんになった」(71ページ)
実家の母親は子供が与える小遣いを集めて娘の漢方薬を作る。体が暖かくなる漢方薬は「子供ができる補薬」だそうだ。母親は、自分が生きてきた世の中の真理のように、海も子供を必ず産まなければならないと信じている。姑は何気なく妊娠の知らせを聞く。実家の母親、姑の生まれていない孫に対する愛は、パダが試験管施術を決心する動機を与えたりもするが、圧迫感を与えたりもする。伝統社会で「出産」は「跡継ぎ」ということを意味したため、夫婦の問題というよりは家門の問題だった。海の姉は以前の時代の価値に犠牲になったケースだ。姉の夫の実家と義兄は糖尿病の姉に子供が欲しかった。姉が妊娠した子供は毎回間違っている。数回の妊娠と流産で姉の健康は極度に悪くなり、そんな中で命をかけて息子を出産した。その代わり、姉は視力を失い、糖尿病の症状が深刻に悪化した。「家族の荷物」になってしまった姉はわずか30歳の花のような年齢で亡くなった。
姉のように生きないと誓ったパダは、いつから他人が望む人生を生きているのではないかと振り返る。
「どうしてこんなに子供に首を吊るすの?私は母を愛したが、母は最も遠ざけたい存在でもあった。そんな私が本当にお母さんになりたいのかな?それともお母さんの言葉のように老いて一人になるのではないかと怖くて子供を産もうとするのだろうか?子供でも産んだ方が人生であまり失敗しない感じがするだろうか」(127-129ページ)
思いがけない贈り物
試験管施術をあきらめたパダとサンイに期待できなかった希望が訪れる。
「私たちの赤ちゃんの心臓がドキドキする音、世界で一番聞きやすい音です」(150ページ)
海と山に子供が訪れるだろうか?海と山の心に平和が訪れるだろうか?